Photo and Law

Arts and Law(以下AL)と東京アートポイント計画は、アートのためのキャリア支援プログラムとして、現在写真に関わる仕事をしている方または将来的に写真に関わる仕事をされる方を対象に、「Photo and Law 写真と法について、ホンマタカシと考えてみる。」というワークショップ形式のセミナーを、3331 Arts Chiyodaにおいて開催しました。


今回の企画は、モデレーターを担当した水野祐(弁護士/AL所属)が、弁護士として写真家と仕事をする中で、写真作品を制作する現場において写真に関する法的な問題が整備されていないと実感し、写真家の方を交えて、いま・これから写真をめぐる法的環境について整理してみたいという思いから行われました。法律家と写真家などの現場との間をつなぐ議論がなされていないことに問題意識をもって開かれたセミナーとも言えます。

まずは、水野の方から、ホンマさんの作品を例に、写真に生じる権利の基本的な構造や、写真作品の制作を撮影行為と発表行為に区別し、それぞれの段階で生じる法的問題を整理しました。具体的には、写真自体の著作権、写真に写り込んだ人物の肖像権・パブリシティ権、建築物や美術品などの著作権、など現在の著作権法を中心に、写真をめぐる法律・権利について簡単に説明をさせて頂きました。

特に議論となったのは、人物写真においてどのような場合に肖像権侵害にあたるか、どのようにすればそのリスクを避けられるのか、ということです。実際に裁判が起った場合、どのようにトラブルが表出し、裁判所においてどのような判断がなされるのかなどをご紹介し、そうした問題が起きないようするために最低限やっておいたほうがよいことなどを、ホンマさんからの質問に答えるかたちでお話させて頂きました。たとえば、写真撮影に際して行う承諾書がどこまで有効なのか、実際に権利を侵害してしまった場合の法的措置はどうなるのか、ストリートスナップの手法で知られるアメリカ人写真家のフィリップ・ロルカ・ディコルシア氏の作品についての事例が日本で起きた場合にはどうなるのかというような質問がなされました。

その際には、アメリカと日本の法制度の違い、具体的には「フェアユース」の概念について説明をしたり、パトリック・カリウ氏とリチャード・プリンス氏の裁判例やマッド・アマノ氏のパロディ事件を検討したりしました。また、ホンマさんには、ご自身の経験談や過去におきたトラブルについてユーモアを交えてお話いただけたことから、現役の写真家が直面してきた問題について我々も知ることができ、トーク内容にも厚みがでました。


ホンマさんとのトークの後には、参加者の方に事前に撮影してきていただいたスナップ写真をスライドに映しながら、その写真が問題となりそうな箇所を参加者全員で議論するワークショップ。ホンマさんの講評も踏まえながら、個性ある写真に対して、アリなのか、ナシなのか、ここらへんまではOK、などの議論を行いました。

最後に、ホンマさんがおっしゃられたことで興味深かったのは、「確かに権利関係についての意識は重要ではあるけれど、表現を志す者としてはそれを意識しすぎることで自己検閲しすぎるのはよくない」という言葉です。企画した我々もこのセミナーで参加者に持ち帰ってもらいたかったのは、ホンマさんの言葉を通じて「どのあたりまでがアリで、どのあたりからが駄目なのか」「法的問題について、どの程度まで考える必要があり、どの程度まで考えなくていいのか」という「感覚」でした。参加者に著作権や肖像権という権利に関する知識を厳密に理解してもらいたいということではありませんでした。


結局のところ、著作権侵害となるかは様々な事情の総合考慮によって判断され、明確に判断できるものではないことから、ホンマさんもおっしゃっていたように、写真の撮影・発表という制作活動を通じてモデルや関係者とのコミュニケーションをいかに行うかが重要であるということに尽きるのかと思います。

今回のセミナーでは、写真作品を制作する際にどのような法的問題が起きうるか、またそれをどの程度考慮しなければいけないのか、をホンマさんと一緒に考える貴重な時間を過ごすことが出来ました。ありがとうございました。