第4回:「ウェブ空間」をデザインする/トークセッション

Creators and Law第4回では、ゲストに武田俊さん(KAI-YOU, LLC.代表)を迎え、インターネットを利用したプロジェクトにおいて「ウェブと法」がどのように機能しているかを検証しました。 

武田さんは、「世界と遊ぶ」をテーマにした文芸誌『界遊』の編集長であり、「すべてのメディアをコミュニケーション+コンテンツの場」に編集・構築することを掲げたメディアプロダクション、KAI-YOU, LLC.(合同会社カイユウ)の代表でもあります。
編集者、イラストレーターなどの出版関係からエンジニア、ウェブディレクター、イベントプランナーといった職種の方までを巻き込んで多様なプロジェクトを立ち上げている武田さんは、企業の代表者という立場でもあり、ウェブ空間での法的問題、またそれらを継続していくうえでの組織づくりの問題にいろいろと突き当たることも多いとお伺いしたことから、今回のゲストとしてお招きしました。

ウェブサービスと著作権
トークセッションでは、まず武田さんに、ウェブサービスを運営する中で気になっている法的なトピックについてお伺いしました。

多種多様なウェブサービスやウェブメディアがリリースされている昨今、武田さんはそういったウェブサービスなどにおけるプライバシーポリシーや利用規約などの作成方法について、関心をお持ちとのことでした。特にCGM(1)型のサービスでは、ユーザーが自ら様々なデータをアップロードして公開することができるため、著作権関連の項目には注意が必要です。

例えば、ユーザーが画像を自分のページで公開できるウェブサービスの場合には、投稿された画像が第三者の著作権を侵害する恐れをはらんでいます。もっとも、これはgoogle検索などで見つけた画像を無断で投稿した場合に、すべて著作権侵害になるということではありません。画像のうち、「創作性」があるもののみに著作権が発生するからです。例えば、炭酸飲料のボトルの画像をコピーしたとして、単純に正面からボトルを写真に撮っただけの画像では、「創作性」が認められないとして、著作権の侵害には当たらない場合が考えられますが、美味しそうに炭酸がはじけていたりシズル感を出したりしているような画像には、「創作性」が認められるとして、著作権が発生している可能性が相対的に高くなります。


プラットフォームなら許されるか?
CGM型サービスの場合、サービスの運営者はあくまで仕組みを提供しているだけであって、そこで使用される画像などはユーザーがアップしたものです。このようなプラットフォーム提供者にも、問題のある画像を使用させた責任が問われるのでしょうか。
プラットフォーム上で発生している著作権侵害状態を放置している場合は、権利侵害を助長しているとされることもあり、責任が問われる危険性があります。 対応策としては、例えば、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)(2)の下でリリースされている画像など、著作権の問題をクリアした画像だけを検索できるような仕組みであれば、このような危険は回避できます。また、画像アップロードのルールをきちんと定めることなどにより、作成されたランキング自体を著作物として、画像はそのための引用にすぎないとする仕組みを作ることも考えられます(3)
また、法的に厳密にみるとグレーでも、市場的な妥協点として、宣伝価値があるから問題視されていないようなケースもあるとの指摘もありました。特に出版業界のような長年の積み重ねがある業界では、業界内の通例によって事実上黙認されているケースもあります。逆に歴史の浅いウェブの世界では認められにくいかもしれません。
とりわけスピード感やユーザビリティがサービスの成否を決めるウェブの世界では、使いやすさとリスクヘッジのバランスをどこでとるかが難しい課題となるようです。

新しい創作環境における、あるべきルールとは
次に、武田さんから、上記の問題に限らず、従来と大きく変わったメディア環境に法的ルールの整備が追いついていないのではないかという問題提起がありました。 
個人がメディアを活用して、二次創作的なものを流通させてヒットさせる=バズらせることができる現代では、無名の権利者が無数に増えている。その現状に従来のガバナンスが対応できていない、という指摘でした。 むしろ、クリエイターのほうが著作権法をはじめとする(ある意味で)不自由なルールに対して批評的な振る舞いをするようになっているといいます。 例として、KAI-YOUが提供している「Recode」(4)というビジュアルレーベルの活動が紹介されました。Recodeでは、従来はネット上で無償で提供されることの多かったビジュアル作品を、キャンバスに印刷して手に取れるプロダクトに仕上げて販売するというサービスを行なっています。 オリジナルが無限に複製可能なデータで、複製物が一点もののような仕上がりで届けられるという相反性が、オリジナルに権利を与えて保護し複製を規制するという著作権法制度における、インターネット文化との不適合性などへの批評といえそうです。 
このような、作家が感じていること、最前線でやっている人たちの感性を取り入れた制度設計があるべき、という武田さんの問題提起に対し、日本版フェアユース(5)などの新しい法制度が必要とされていることなどが弁護士陣から述べられました。今後の法改正の議論に注目したいところです。

クリエイター側のリテラシー向上の必要
議論は、いかにしてクリエイティブをマネタイズするか、という方向に向かいます。 インターネットの普及によって、ウェブ上でコンテンツを販売することが容易になった現代においては、販売という局面においても、創作活動にまつわるルールを理解し、積極的にさまざまなマネタイズの方法を実践していくことが有用だといえそうです。
武田さんから、この論点について近日ローンチ予定の新サービス「電書カプセル」が紹介されました。 「電書カプセル」は、ユーザーが「カプセル」と呼ばれる電書コンテンツを無料あるいは有料でダウンロードし、内蔵ビューワで閲覧できるiPhone向けアプリですが、トークショーなどイベントにおいて発生する、スピーカーの発言などのコンテンツを電子書籍的にパッケージして販売することができるなどの特徴を持つとのことです。将来的に出版などの形で出来上がる予定のもののプロトタイプ版を販売したり、そもそも完成版のパッケージ提供が予定されていないものでも販売することができる点がポイントだそう。
さまざまな形態のSNSやクラウドファンディング・サービスの普及によって、ユーザーと作り手が、モノの作られる過程やそのモノにまつわる物語を共有することが容易になり、同時にそれらに価値が見出されるようになっているといわれていますが、そのような「プロセス」や「ストーリー」の形成過程には多くの人が関わることが多くあります。 そのように多くの人が関わる「プロセス」そのものを販売するとなると、そこにはたくさんの「作者」が存在することになり、著作権の取扱いなどの問題が浮上してきます。
新しく作られるもの以外にも、例えばもともと紙の雑誌だったものをウェブ上でアーカイブする、というプロジェクトにあたって、多数の著作者の行方がわからずに作業が立ち往生するというケースは多くあります。 
また、イラストレーターに対する待遇についての問題も議題にあがりました。 インターネット上で多くの人が自作のイラストレーションを発表していて、そのなかから商業作品への参加を誘われるケースがありますが、そういったもののなかには、著作権譲渡についての対価の設定などについて、あいまいなまま業務が進むこともあるようです。 
ただ最近では、契約についての知識がイラストレーターの間で少しずつ共有され始めているようで、CCライセンスなどの仕組みが今後さらに普及していく見込みも語られました(6)。 
今後、ウェブ上のプラットフォームを提供してイラストレーターなど作品の発表者たちをとりこんでゆくには、契約内容や、著作物使用に関するルールを明示するなどの配慮も大事になるのかもしれません。













 
 
 








(1)CGMConsumer Generated Mediaとは、消費者がインターネットなどを使って自らコンテンツを生成していくメディアのこと。
TwitterFacebookなどのようなSNSを始め、YouTubeやニコニコ動画などのような動画共有サイトや、食べログやYahoo!知恵袋などの情報提供サイトなど、多様なバリエーションがある。









(2)インターネット時代のための新しい著作権ルールの普及を目指し、様々な作品の作者が自ら「この条件を守れば私の作品を自由に使って良いですよ」という意思表示をするためのライセンス。このライセンスを利用することで、作者は著作権を保持したまま作品を自由に流通させることができ、受け手はライセンス条件の範囲内で再配布やリミックスなどをすることができる。
(3)著作権法321









(4)KAI-YOUとビジュアルチームProject-Recodeが連携して設立したビジュアルレーベル。





(5)著作物が著作権者の許諾なしに利用できる場合(つまり、著作権が制限される場合)の規定の仕方について、具体的な類型を列挙する方法によるのではなく、抽象的な判断指針を示す方法を用いることで著作物の柔軟な利用を認める法理。
























(6)2012年12月、クリプトン・フューチャー・メディアが発売するボーカロイドソフト及びそのキャラクターである「初音ミク」のイラストがCCライセンスに対応したことが大きな話題になった。