第4回:「ウェブ空間」をデザインする/トークセッション

クリエイティブな活動と組織づくり
トークはさらに、組織づくりの話へと続きます。 KAI-YOUは会社としてはLLC、つまり合同会社という形式を採用しています(7)。会社というと株式会社が一般的ですが、なぜ合同会社というかたちを選んだのか。武田さんはいくつかの理由を挙げてくれました。

設立費用が安い
合同会社の設立費用は、登録免許税などの面で、株式会社を設立するよりも10数万円安くなります。大金ではないかもしれませんが、会社のスタートアップ時には大きな影響を及ぼす場合も少なくないでしょう。 

会社のルールの自由度の高さ
例えば、株式会社は原則として出資額に応じて配当=出資者の利益の額が決まりますが、合同会社の場合には、会社への貢献度などを評価して、定款の定めにより出資額には比例させない配当にすることもできます。

メディアベンチャーのイメージづくり
合同会社は平成18年に施行された新会社法によって新しく認められた会社のスタイルで、ベンチャー企業などに好んで採用されているという事情もあります。

また、合同会社には、基本的に出資者と経営者が一致するという特徴や、取締役などといった株式会社では会社内に設置しなければならない機関を設置しなくて良い、といった利点もあります。 意思疎通も円滑にできる同志で協力して運営していく、という方針の会社にとっては、理念を体現する会社形態だともいえるかもしれません。 
永井弁護士からは、似たところのある組織形態として有限責任事業組合(LLP)(8)の存在も紹介されました。合同会社とは、法人格がないことや課税の方式が異なるといった違いがあります。 
ただし、武田さんは現在、株式会社に組織を変えることも検討中だそうです。 理由としては、合同会社の認知度や社会的な評価が相対的に低めに見られることが挙げられました。KAI-YOUは徐々に経済規模が大きくなっているので、出資や銀行からの融資を受けるにあたっては、株式会社の形式をとるメリットがあると考えているそうです。
会社法においては、合同会社から株式会社への組織変更、という手続も認められており、 経済的に小さく始めて大きく育てるような事業を計画している場合には、そのような過程をふむのもひとつの手段といえるでしょう。 もっとも、経済規模の大きな会社でも、アップルコンピュータの日本法人Apple Japan合同会社が合同会社を採用するなど、今後、柔軟な組織設計が加速していく見込みもあります。
自分の活動を会社などの法人にするときには、まずどういう法人の形態を選ぶのか、一考してみる価値はありそうです。

ウェブ空間の新しさが課題をあぶり出す
今回のトークセッションでは多角的な話題について紹介や議論がなされました。 ウェブ空間という場所の自由さが、従来あまり表に出てこなかった法律やさまざまなシステムの問題点、議題を可視化しつつあることが明らかになったのではないでしょうか。
セッションの後半、武田さんから出た、クリエイターやクリエイティブサービスの提供者自身が法律について勉強することが、活動を面白くするためにも重要ではないかとの意見が印象的で、武田さん自身が新しい領域を開拓していこうとする姿勢を強く感じました。





(7)会社法575条以下。社員が有限責任を負うにすぎないとする点で株式会社と同様の性質を有するが、機関の設計や配当のルール等を自由に策定できるとする点で株式会社と異なる。

















(8)事業を目的とする組合契約によって作られる企業組織体の一つ。日本においても平成17年、『有限責任事業組合契約に関する法律』が制定され、組織することが可能となった。組合員の有限責任、組織内部の権限や損益の分配が自由に設計できるという合同会社と類似した特徴を持つことに加え、組織ではなく出資者に対し直接課税される(いわゆるパス・スルー課税)という税制上の特徴を有する。