デザイナーのための確定申告 自分のワークスタイルを振り返る

昨今、ツールやメディアの多様化によりデザインが関わる仕事が大きく広がりをみせ、それに伴いデザイナーの役割が変化しつつあります。その中で特定の専門分野からさらに領域を広げて活動するデザイナーや、異業種の方でデザインの仕事に携わる方も増えています。

毎年避けて通れない確定申告ですが、特にデザイン分野に特化して丁寧に確定申告を取り扱ったレクチャーは少ないのではないでしょうか。仕事の幅が広がる一方で、不安を抱えながら自己流で申告手続を行っているデザイナーの方々も多いのではないかと思います。

そこで今回は、対象者をフリーランスのデザイナーの方だけでなく、インハウスデザイナーで個人でも仕事を受託する方、さらにはプロジェクトベースなどの新しいアプローチでデザインの仕事に携わる異業種の方々など、多角的にデザインの仕事に取り組まれるみなさんも対象にしたセミナーを開催しました。講師はArts and Lawのメンバーで公認会計士/税理士の山内真理です。

実際にお越しいただいた方々は、グラフィック、建築、ファッション、プロダクト、エディトリアル、WEB・映像関連と職域は本当にさまざま。職種もデザイナーだけではなく、編集者やコーディネーターなど、デザイナーと近い領域で活躍される方にも数多くご参加いただきました。


レクチャーのはじめには、「デザイナーを取り巻く環境はこれからどうなっていくか」というお題で参加者のみなさんに付箋に書きだしていただき、各テーブルでディスカッションしながら現状をシェア。デザインの現場のリアルな意見がぞくぞくです。

その後、参加者から出された意見もふまえて、講師自身が考えるデザイナーの環境の変化をお話させていただきました。例えば、チームプロジェクトの増加や異業種との協働をはじめとするフレームワークの多様化、セールスインフラやチャネルが充実したことによるプラットフォームの整備について、またインハウス-フリーランスという分け方にとどまらないワークスタイルの多様化についてなど。


実際に、ビジネスが複雑化・多様化すると、会計処理も当然複雑になっていきます。その際、最初の取引の入り口でケアしておくことが大切です。また、どのようなワークスタイルを取るとどのようなケアが必要となるかをきちんと整理しておくこと、いつどのようなキャッシュ負担が生じるのかを色々とシミュレーションをしておくことで、後のトラブルを回避しやすくなります。これらは是非習慣づけていただければと!

もちろん専門家に依頼した方が良いタイミングもあります。例えば、近々法人化を考えている場合や事務負担から解放されてクリエイティブに集中したい場合。さらに、資金繰りやファイナンス等を含めて相談したい場合、国際的な取引が増えて来ている場合などは、自分の手に負えなくなる前に早めに専門家に相談された方がベターかもしれません。

とはいえ、どんな場合でも、ある程度の会計・税金の知識を身につけておくということは、自分のワークスタイルを自由にデザインするためにとても有効だと思います。これは今回のセミナーで特にお伝えしたかったところ。


さて、レクチャーの後半には、これから仕事の幅を広げて活動される方に、異分野のデザイナーの仕事スタイルや取引形態・ビジネス構造に対する知識を整理していただくため、デザインに関わる取引の交通整理を。その中では、特にチームプロジェクトでの収入・経費の取り扱いや外国で獲得した収入の処理についてたくさんの意見や質問が飛び交いました!まさに最近の動向ですよね。

続いて具体的な処理方法の説明へ。まずは申告方法を選択するため、青色/白色申告の各メリット・デメリットについて。その他、デザイン分野特有の収入である、デザイン料・ロイヤルティ収入、ディレクションフィー、講演料・原稿料等を、どの項目におとしこむかなど、かなり詳細な処理まで話しが及びました。それぞれの状況によって処理の仕方はさまざまに工夫できますが、原則は実態にきちんと照らし合わせること。これが、混乱なく適切な処理を行うポイントのようです。

最後の質疑応答の時間には、本当に数多くの質問をいただきました。みなさん、迷っている部分も立場や属する分野によってそれぞれ違いますね!トピックとしては、どの時点で収入や経費を計上するか、どの収入をどの所得として計上するか。一時所得・雑所得の計算、源泉徴収について、入金されたお金の処理についてなどなど。

実際の処理はかなりテクニカルなことが多いので、そのスキルを身につけるまでは気が重いかもしれません。でもここでがんばって基本の知識やスキルを得れば、自分のワークスタイルに適した処理を行うことが可能になります。つまりそれが一番の節税につながり、その後の幅広い仕事を生む良い環境整備になるはず。そして何より安心して仕事ができますよね!

今回は、企画趣旨より、ベーシックな確定申告の知識の整理から、昨今のデザイン分野特有の取引事情をふまえた詳細な留意点まで幅広く扱うことになりました。アンケートでも「まさに今欲しい知識を得られた!」「点と点であった情報がつながった!」などの嬉しいお声もたくさんいただきました。

確定申告をすることは、一年間の自分のワークスタイルを振り返ること。またそれは今後の仕事環境をデザインすることにつながる。この視点をもって帰っていただけましたら幸いです。


参加者のみなさま、お疲れ様でした!ありがとうございました。